王子様への片道切符 ~旅客営業規則に阻まれたお姫様の恋心~
こんにちは。たかまろです。
今月は久しぶりに遠出するので宿の手配や乗車券の購入などをしているところでございます。そんな中、想定外に伸びたのがこのツイート。
姫から王子への片道切符を手に入れました pic.twitter.com/yXaaNZzR4e
— たかまろ (@x_tkmr) 2018年3月2日
岐阜県多治見市にある「姫」駅から東京都北区「王子」駅までの普通乗車券です。なんかロマンチック。今回はこの乗車券について書いていきたいと思います。
遠距離恋愛が彼女を苦しめる
JR太多線の中間駅である「姫」駅。名前からして大きな宮殿からフワッフワのドレスを纏ったお嬢様が出迎えてくれそうな感じがする。実際は乗降客数1日平均400人程度の無人駅。列車は1時間高々3本という寂しい駅である。
対して「王子」駅はJR京浜東北線から東京メトロ南北線、都電荒川線が集合する主要駅である。一日の乗車人員は63,690人(2016年)。姫駅とは大きく違う。
まさに対局の地位にいる2人と言っても過言ではないだろう。2人の距離は直線距離にして約250km。地位の格差や距離によって隔てられた2人を繋ぐ手立ては果たしてあるのか。……これが案外面倒。
多くのJRの駅には指定席券売機なるものがある。いわゆる「紫色の自動券売機」で、特急券や定期券、乗車券を購入できる便利な機械である。
この券売機には「乗換案内から乗車券を購入」という普段使いするにはもってこいの便利な機能があるのだが、これで「姫→王子」を購入するとある問題が生じる。乗換案内は2駅間を合理的な経路で結ぶことを勿論推奨してくる。よって、普通に考えて彼女ら2人はこういうルートで結ばれるだろう。
姫(太多線)多治見(中央西線)金山(東海道線)東京(東北本線)王子 …①
ここで旅客営業規則を見てみよう。
(特定都区市内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)
第86条
次の各号の図に掲げる東京都区内、…(中略)…(以下これらを「特定都区市内」という。)にある駅と、当該各号に掲げる当該特定都区市内の◎印の駅(以下「中心駅」という。)から片道の営業キロが200キロメートルを超える区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによって計算する。
王子駅は東京都区内、そして姫駅は東京都区内の中心駅である東京駅から200km以上ある。よって「姫→王子」を①の経路で発券してしまうと券面には「姫→[区]東京都区内」と表示されてしまう。またこの切符は東京都区内のどこでも旅行を終了できる。王子様への一途な気持ちを伝えたいのにこれでは台無しである。……まぁ上京してから品川とか東京に目移りしちゃう気持ちもわかるけど。ここは王子様一択で行きたい。都会住みの王子様を攻略するにはさてどうしようものか。
姫は遠巻きに王子へアタックする
また旅客営業規則に戻ってみるとこんな事が書いてある。
第86条(続き)
ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。
簡単に噛み砕くと「同じ特定都区市内を出入りする経路にすれば、ちゃんと目的地の駅同士を結ぶ切符になる」という話。つまりこういう経路にすればよさそう。
姫(太多線)多治見(中央西線)金山(東海道線)東京(中央東線)西国分寺(武蔵野線)南浦和(東北本線)王子 …②
一旦武蔵野線を経由することで東京都区内を脱するので先程の要件を満たし、「東京都区内」の表記が外れるわけです。*1
さてこれで経路の準備は完了。あとは実際に発券してもらうだけ。
大学生協ごときに彼女の恋は実現できない
大学で学割証を発行し、いざ生協のみどりの窓口へ。②の経路を伝えていざ発券というところで生協のおばちゃんから一言。
──なんか東京出たり入ったりする切符が出せないみたいなんですよ…。
毎回クソみたいな経路で出してもらいお世話になっている生協のおばちゃんをもってしてでも出せないだと…?やはり王子様への恋というのはそんな簡単に叶うものではないのか。
結局JRのみどりの窓口で無事発券。券面にはきちんと「姫→王子」の文字が。
4日間有効の王子様への片道切符。いつか両想いになってくれたりするのだろうか。鉄道だけにすれ違いで離れていくなんてことがないといいのだが。